北海道・札幌発・だべさ通信5

厳重戸締まりの向こうは『浜辺の歌』

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町内の用事で出向いた池田さんのお宅。池田さんは80歳くらいで、数年前に奥さんを亡くされてからは一人で暮らしています。
玄関の取っ手の所に、テレビのリモコンのような施錠が取り付けてありました。
すごい厳重な警備だな。暗証番号を打つと思われる数字のボタンが、いかにも侵入者を寄せ付けないゾ!っていう威圧感を出しているね。

 

 

ピンポ~ン、インターホンを押しました。
少しの間をおいても反応がありません。留守かな・・・
ピンポ~ン・・・出直そうかと思ったその時、インターホンから2つの光線がピカ~~!!
おお、なに、今どきのインターホンて、顔にライトを当てるのかい。
思わずインターホンを覗いちゃったから、きっと私の顔は鋭い広角レンズで丸~くゆがんで、怪しい人物に映っていたに違いない。
「どちらさん?」と声がしました。
あ、あの 町内のぽぷらです。
「ちょっとお待ち下さい」

 

 

すりガラスの向こうに見えた人の手が、チェーンをジャラリと外して、鍵をガチャっと開けるのが見えました。
「こんにちは。あの、町内からのお知らせです」
「ああ、どうもどうも、ご苦労さんです」色白で、背の高い池田さんは、足取りもしゃんとしています。
奥の方から音楽が聞こえています。ああそうか、だからピンポンが聞こえなかったんだね。
♪♪~♪♪・・・”
あら、知ってる、そのメロディ!
私達世代なら一度は聞いた事のある『浜辺の歌』です。
「ああ、これね、カセット(テープ)。こういう唱歌を聞くのが好きなもんで、いっつも聞いているんです」
池田さんは、ちょっとニッコリして言いました。
そうなんですかあ。私もこういうの好きですよ。あら下駄箱の花(造花)奇麗ですね。
「家内が飾ったのをそのままにしてあるからね」

 

 

玄関は、見るからに人を寄せ付けない構えになっているけれど、池田さんは優しくてシャイなお爺さんだったんだね。
この先テープはいったい何回まわってくれるんだろう。
どうか、池田さんが元気なうちは、すり切れずにメロディーを流し続けてくれますように。あ、カセットテープレコーダーも壊れませんように。

 

『浜辺の歌』

あした浜辺を さまよえば、
昔のことぞ 忍ばるる。
風の音よ、雲のさまよ、
寄する波も貝の色も。

ゆうべ浜辺を もとおれば、
昔の人ぞ、忍ばるる。
寄する波よ、返す波よ、
月の色も、星の影も。

 

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