買い物帰り、私のずっと先を杖をつきながら歩いているお爺さんがいます。
歩道の横の草むらが気になるようです。
腰を曲げて何かを覗き込んでいるね。
珍しい花でも観察しているのかもしれません。
今度は杖でちょっと草をよけてみたりしてる。
そうか!落し物したのか!
そういえばこのお爺さん、時々ここを散歩しているところを見たことがありますよ。
あの様子じゃ、落としたものは小さいもののようだね。
そうこうしているうちにも私はお爺さんにどんどん近づく。
お爺さんは、その場を2歩ほど向こうにずれると、まだ探してる。
きっと大事なものに違いないと思いました。
「あの、何か探し物ですか?」思わず声をかけました。
お爺さんは、私にいきなり話しかけられたもので、腰を曲げたまま顔をヒョイとあげて、それからちょっとにんまりして言いました。
「四葉のクローバーをね」
四葉のクローバーとは、まあなんとメルヘンチック!
「見つかるといいですね、幸せな事が起きますように」
お爺さんは「いやいやどうも」と、ちょっと照れくさそうに言ってから、また草むらを覗き込みました。
お爺さん、あれから四葉のクローバー見つかったかな。
私も今度探してみましょうか。
でもね、まずはどこかに置いてきぼりしたメルヘンチックな心を探すとこから始めなきゃ。