北海道・札幌発・だべさ通信5

カメよりも長生きする叔母

叔母はカメを飼っています。
甲羅の大きさは15センチ以上あると思う。
たまにお宅にお邪魔すると、自分の体の倍ほどの長さしかない飼育ケースの石の上で、物欲しげに両手をバ〜っと広げ、くびれのない首をヌ〜っと出しては、時々ヒュっと引っ込める。
と思ったら、また何かを思い出したようにヌ〜っと顔を出すと、深いシワの皮がまるでジャバラのように広がる。
何を考えているのかわからないけど、とにかく彼(彼女)にとって、すべての世界は、この飼育ケースの中と、霞んで見えるであろう茶の間で動く叔母の姿だけ。

 

 

その叔母が久しぶりに、婆ちゃんにお線香をあげに来てくれました。
「あ〜あ、オラももう歳だあ〜。カメ、どうすっかと思ってよ、池にでも投げっかなや〜(捨てようかな〜)」
いやいや、それはいけないと思うなあ。

 

 

「あのカメよ、ほれ、あそこの店ができた時に買ったんだあ。だからもう、何年たつんだべ?」
え!ということは、軽々20年以上は経ってるね。

 

 

「ゼニガメだっちゅうから、なんぼ銭が貯まるべかと思って買ったけど、な〜んもだ」
へ〜、あのカメはゼニガメって言う種類なんだ。

 

「銭は貯まらねえし、オラばかり弱ってくるべさ。カメなんかどーすんだべ」
どーすんだべったてねえ。
ウチはもらいませんよ。
カメは寿命が長いと聞きますが、ゼニガメは20年はゆうに生きて、ややもすると40年も生きるそうです。

 

 

ウチの婆ちゃんより6つ下の妹の叔母も、ここ数年で昔ほどの元気がなくなり、まるで婆ちゃんの後ろ姿を追いかけているようにさえ感じてきました。
そうは言っても、まだまだ頭はしっかりしています。
「ここの婆さんは(亡くなったのは)90(歳)だったけどもさ、これからは医学の進歩で寿命が伸びるべ。だから私なんかは100(歳)よりもっと生きるべなあ」
ほ〜〜、叔母はなかなかのインテリね。

 

 

銭の貯まらないタダのゼニガメも、20歳過ぎともなれば、人間にすると叔母と同じような年齢なのはず。
飼い主のいなくなったあとのカメは、その後はどうなるのだろうと思う反面、もしかしたら叔母のほうがゼニガメよりも長生きかもしれないなあなんて、そんなことを思ったのでした。


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