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朝、ソファに腰掛け、茶色に変わりつつ山をぼ〜っと眺めていると、息子の部屋のラジオから
” 札幌の時計台が 7時をお知らせします ”というアナウンサーさんの声が聞こえました。
ラジオの音は、札幌の街の騒音に切り替わり、その中から、カ〜ン カ~ン カ~ン カ~ン カ~ン カ~ン カ~ン ・・・・
鳴り終えれば、音は再び、街の騒音に消えました。
観光客の皆さんには申し訳ないけれど、実際の時計台は、でっかいどう北海道のイメージとはまったく違いますね。
小さくて、大きなビルに囲まれていて、観光パンフのような写真をとろうと思ったら、設置されているお立ち台に立つしかないもんね。
観光用の時計台の写真の多くは、建物のシンボルとも言える時計台の部分だけ。
そのイメージを膨らませて実際の時計台を見たら、日本の三大がっかりの名所の1つと言われても、いたしかたないかもしれません。
時計台の鐘の音は、本物を聞くよりラジオから流れる時報として聞くほうが多いので、たまに札幌の街を歩いているときに時計台の鐘の音に遭遇すると、
”あ、本物の時計台の音だ・・・”と、有名人にでも会ったみたいな気持ちになります。
車の走る音と時々クラクション、早足で歩く人ごみや街頭放送の音の中で、穏やかに貫く時計台の鐘の音を聞くと、はたと立ち止まる気持ちになります。
”焦る気持ちはわかるけど、ここはちょっと我にかえってみてごらん。あなたは十分に頑張っていますよ。ゆっくりだっていいじゃありませんか。ほら、あの車、信号で飛び出したって、次の信号じゃ、やっぱり止まってしまうでしょ”
なんて言われているみたいでさ、忘れていた自分の心が、ほんわかと暖かくなるのを感じるのです。
どこの町にも、そこで暮らす人の心を安心させてくれるものがありますね。
山だったり海だったり、お城だったり。押し入れにずっと閉まってあった昔のノートだったりとか。
札幌の時計台の鐘の音は、街の魔法にかかっていしまった人の魔法をといてくれる、気付け薬のようなものなのかもね。
気付け薬・・・古いか。