北海道・札幌発・だべさ通信5

あなたの心に、昆布の煮物

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その事務所にやって来たのは、とっぷりとしたお婆さんでした。
「いたかい?」
高齢とお見受けするけど、腰もしゃんとしていて、足取りもしっかりしています。
どなたかしら。
事務所の職員さんたちも、あら・・・・といった様子です。
「おや、おばさん!」所長さんがやってきました。
「いたいた、今日はね、コレもって来たんだよ」

 

 

椅子に腰掛け、ビニールのショッピング袋の中からガシャガシャと取り出したのは、またまたビニール袋に包まれたお重箱です。
どっしりした塗り物で、丸みのある長方形をしています。
お婆さんのふっくらした手が、大きなフタを開けると、中には昆布の煮物がびっしりです。ひとつひとつ、しっかり結んだ昆布の他に、小さなホタテも入っています。
「これはさ、そんなにそんなに、いっつもは作れないんだよ。たーいへんだんだから作るの。ほら、そっちのお兄さんも一緒に食べればいいべさ」
突然のお客様に、皆、仕事の手を休めて一旦休憩、事務所の空気は、昆布の煮物みたいに柔らかくなりました。

 

 

ひっくり返したフタの内側に、文字が書いてあります。
「これ、あんたの名前」そう言われて所長さんはびっくり。
その重箱はなんと、所長さんが生まれたときの内祝いなのだそうです。
「したら行くわね」
「ああ、送らせますから・・・」

 

 

自分を思ってくれる人が周りにいるという事を、いつのまにか忘れています。
一番は、うんと身近にいる人なのにね。
たまにはこちらの方から、”あなたを気遣っているのですよ”のサインを送ってみるのもいいかもしれない。
今さら、なんだかやりにくいかも。せめて、”ありがとう”に込めようか。

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