北海道・札幌発・だべさ通信5

お爺さんと お婆さんになるとき その2

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旦那さんと病院に到着したとき、産科の長い廊下で長女の婿さんは腕を組んで立っていました。
ドアの向こうが気になります。近づいてみたり離れてみたり。
「まだみたいです」

 

 

近くにソファが置いてあるものの、3人ともやはりドアの向こうが気にかかる。
廊下をあっちに行ったりこっちに来たり。
1時間が過ぎたころ、ドアが少し開きました。
3人とも「!!!」

 

 

すき間の奥から、看護士さんが言いました。
「冷たいお水が飲みたいそうです、持ってきてもらえますか?」
婿さんは小走りにお水を取りに行って戻ると、小さくドアをノック。
すると少し開いたドアのすき間から手袋をはいた(はめた)手が出てきて、お水のボトルを受け取るとすぐにドアが閉まりました。

 

 

今度は急ぎ足で看護士さんがやってきて、慌てた様子でドアの向こうに入って行く。
そのとき、何やら物音が。
3人「!!!」
しばらくして出て来た看護士さんに
”あの、生まれたんでしょうか?”
と訪ねると
「いえ、まだですよ」
そうですか・・・・

 

 

3人は同時に思いました。
急ぎ足で入って行った事、そっけない短い返答。
もしや何かあったとか、そういう事はなかろうか・・・・・

 

 

こういう時だもの、お産の経験者の私が、いかにも落ち着いたフリをして男性群を促してみる。
”とりあえず、ソファに座りましょうか・・・・”
「そ、そうですね」

 

 

旦那さんが、そばに置いてある雑誌を手にとりました。
『男性の不妊治療??』
あらま、お父さん、不妊治療するんですか。
「ま、まあな・・・」
婿さんは携帯を出してはみたものの、すぐにポケットに入れちゃった。
「あの、もし何かあったら、別な所とかに運ばれますよね・・・」
するとまたもや看護士さんが急ぎ足でパタパタ・・・・
3人「!!!」

 

 

座ったと思ったらすぐに立ち上がり、誰先ということもなく、またまたドアの前に集合しちゃってる。
婿さんは、廊下に置かれている消毒液を、また手にすり付けてる。
旦那さんはというと、腕を組み、何処に行くでもなく歩いてる。

 

 

そしてついに、ドアの向こうから確かに聞こえました。
オギャーオギャー・・・・・大きな声。
3人は顔を見合わせ、
生まれた・・・・・・
お婿さんは、また消毒液をプッシュ!
旦那さんは、廊下の壁の大きな文字盤の時計を写真に撮ってる。
それから、新しい父親と新しい爺ちゃん婆ちゃんは握手を交わしました。
タオルにくるまった小さな男の子は、私たちの動揺をよそに、この世にスヤスヤと現れました。

 

 


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