北海道・札幌発・だべさ通信5

エレベーターでの小さな出来事

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大きな病院になるほど、患者さんの抱えている病気やケガはさまざまですね。
私も、婆ちゃんや旦那さんの入院や手術で、何度もこの大きな廊下を往復しました。
旦那さんが心筋梗塞の時は、救急の廊下の長椅子でひとり、夜中を過ごした事もあったもね。

 

この日、エレベータを一緒に待っていたのは、40代とおぼしき男性の患者さんでした。
それから、小さな女の子と、2つくらいの男の子を抱えたお爺さん。
エレベーターは、なかなか降りてこないけど、みんな静かに待っています。
まもなくドアがサーっと開きました。

 

私が先に入り、次に男性が点滴のスタンドを握って「そしたらな」と、お爺さんに声をかけました。
家族なんだね。
男性が一歩エレベーターに入ろうとしたとき
「お父しゃん、お父しゃん!」
女の子が男性の足にしがみついて泣き出しちゃった。

 

おお~、なんとけなげ!
それでなくても可愛いのに、『お父しゃん』という言葉が、昭和生まれの私のこの胸めがけ、時速162キロの直球で命中。
指がとっさに『開く』ボタンをムギュ~っと押して閉じようとするドアを阻止しちゃったもね。
お父しゃんは、「わかったわかった、もう少ししたら帰るから」と女の子の頭をなでるんだけど、そんなもんじゃ、しがみついた小さな腕は離れない。
ウウ~~ウウ~~と潤ませた瞳で お父しゃんを見上げるもんで、お爺ちゃんは「ほらほら、お父さんが行けないだろう」と言って、彼女の肩をポンポンと叩きました。
それから女の子を引き寄せると、先にエレベーターに乗っている私たちを気遣って、小さく会釈をしました。

 

いいの?いいの? もうドア、閉めちゃうよ。
『閉』ボタンをピ!
ああ・・・・・
まるで両方から幕が引かれていくように、視界はだんだん細く長くなり、ついにはピタっと消えてしまいました。

・  ・  ・

”3階デ ゴザイマス”
お父しゃんは、点滴のスタンドを握って降りて行きました。

 

小さな劇場の第一幕が引かれたような気がしました。
お父しゃん、早く元気になるといいね。
第二幕が見られないのがちょっと残念。
きっとハッピーエンドで終わるに違いないね。

 

 


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