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おじさんは、いつもほがらかで、決して回りを不愉快にさせない紳士です。
「ははは、僕は一度死んじゃったからね」
死んだ?
「ああ、事故でね」
おじさんは若い頃、地上30mからあやまって落ちてしまったのだそうです。
大けがのうえに意識不明で、目がさめたのはなんと事故から一週間後。
「何も覚えていないと思うだろ。それがさ、三途の川まで行ったことだけはしっかり覚えているんだよ」
え~!さんずのかわ!
おじさんは、そのときはっきり見たという光景を話してくれました。
「自分は川の手前にいるんだよ。そしてさ、川の向こうには着物を着た人が何人もいるんだなあ。それがみんな、楽しそうなんだよ。僕も行っちゃおうかな~って思ったんだけれど、やめたのさ」
ゾクゾク・・・
そういう話はよく聞くけれど、本当に三途の川なんてあるのかな。
夢じゃなかったのかな。
「水は冷たかったな~、今でもその感覚は覚えているよ。あまりの冷たさで、川を渡るのをやめたんだから」
わわ、そんな感覚もあったのかい。
「それに、みんなのあの幸せそうな顔もね」
うわあ~~・・
あの世では、みんな幸せになるのかな。でも、水の冷たいのは嫌だなあ。冷え性にはちと辛い。
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