PR
ゴールデンウィークのしめくくりは、幼なじみの男女4人が、隠れ家みたいな居酒屋さん
で集いました。案内された席は、あんどんの灯りがほんのりとテーブルをともす、掘りごたつ式の小上がりです。
セピア色になっちゃった記憶を浮かび上がらせるのには、とっておきの空間だね。
母、妻、嫁とか、普段の自分の肩書きを、上着と一緒に脱いで置いたら、ほらね、もう昭和40年代になりました。
「手稲に引っ越して来た時は、家が広くて自分の部屋が持てて嬉しかったわ」弘子さんは、海鮮サラダをちょっとつまんで、懐かしそうに言いました。
あの頃は、田舎だったせいか集合住宅も広かったもね。
「けんちゃんたら、私のスカートめくったしょや」私はヘンな事をいつまでも覚えています。
「やったやった、ぽぷらちゃんは毛糸のパンツはいてたよな」
そ、そうだった、当時は母の手編みの毛糸のパンツを履いていた。けんちゃんも、そんな事よく覚えているね。
毛糸は別な物からほどいたものだから、クルクルとちじれています。だからラーメン毛糸って呼んでました。
それも寄せ集めのものを使うので、パンツはフタをあけた色鉛筆みたいな色をしていました。
私が「本当は、もっと奇麗なお姉さんとおしゃべりした方がよかったでしょうに」って言ったら、安田君は
「いやあ、気を使わなくっていいさ」なんて言ってくれる。
そうですか、ありがとうございます。
そんなこんなで、昭和の時間もあっという間に過ぎていきました。
お手洗いに立った時、鏡を見てハッとする。まゆげが半分ない。あら、話で夢中になっているうちに、手で顔を覆ったり、おしぼりで拭いちゃったりしたんだわ。
どうしよう・・・・・・って、な~んもさ。
みんな 一つや二つ持っている心の辛い部分には、あえて触れないという優しさが、大人になった証なのさ。
時間は11時半を過ぎました。
ただいま・・・
家に戻ると台所で水の音が聞こえてます。あら、旦那さんがお茶碗を洗ってる。
「はいお帰り」
「あら、お茶碗洗ってくれてんの?すいませんね」
「いいえ、どういたしまして」