北海道・札幌発・だべさ通信5

思い出の町・・・上砂川


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事務所の前に見知らぬ男性が立っています。
「あの私、山田です。本を送って頂いた・・・」
は?
「上砂川の出身で・・」
ああ!先日、『だべさ通信2』の本を送った方?
でも、たしか本州の方ではなかったの?
札幌だっけ?あれ?あれ?
頭の中を”あれあれ”の文字がいっぱいに飛び回り、私は完全に動揺しました。

 

 

千葉県からやって来た山田さんは、スラリとしてて、私より少し年上。子供の頃を過ごした上砂川の町を懐かしんで尋ねた帰り道に、わざわざ私の所に寄って下さったとの事でした。
『だべさ通信2』の本の後ろの方に載せた、JR北海道613の駅 『613駅の、ホームドラマ』 の古いポスターを、とても懐かしんで下さったので、
「出してみますか?」と、ちょっと自慢げに奥の棚に取りに行った私。
えーと確かこのへんにあったような・・ゴソゴソゴソ・・・
あったあった、これさこれ。
あらやだ、これ、すんごい汚れたまんまだわ。あっちゃー・・・・

 

 

すいません、汚れちゃってて。
「いえいえ」
山田さんは、ポスターの『上砂川・ひがしうずら・うずら・しもうずら』という駅名プレートの部分を、懐かしそうに指差しました。山田さんのお話によると、”うずら”という名前は、福井県鶉(うずら)村の人達が入植して、故郷の名前を付けたのだそうです。
上砂川は、以前は炭坑で栄えた町でした。この四つの駅を走った鉄道は『函館本線上砂川支線』と言って、石炭の運搬専用から始まった路線で、1994年に全線が廃止になりました。

 

 

「私が昔住んでいた家の跡はもう、草が生い茂っていて、そこから先へは入れません。ただ、小学5年生までしか住んでいなかったのに、当時の先生の顔までも、よく覚えているのですよ」
初対面の私達夫婦に、山田さんは順をおって丁寧に話して下さいました。
私にも、なんとなくわかるような気がするな。

 

 

子供の頃に住んでた長屋の間取りは今でもしっかり覚えているもんね。広い土間の玄関には黒光りしていた板の上がりがあった事や、茶色がかった畳の色。物干し竿は太い竹で、畑にはルピナスの花が咲いて、雨が降ると、軒からしたたり落ちた雨水が、小石の混じった長いくぼみを作っていた事。冬が近づくと、父が窓にビニールを張った事。
何気ない先生とのやり取りがすごく嬉しかった事などが、トンネルの向こうにぼんやりと、それでいて鮮明に残っているのです。

 

「どうも有り難うございました」
丁寧に頭を下げられた山田さんは、実際の私がこんなはんかくさい(アホみたいな)おばちゃんで、がっかりしたに違いないよな。せっかくの思い出の旅を、最後はなんだか期待はずれにしちゃったね。
でも、きっと大丈夫だよ。古き良き思い出は、私ごときおばちゃんの一人くらいで、揺らぐものじゃないからさ。
ここから手稲の駅までは、歩いて15分くらいかかります。どうぞお気をつけて。

 

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