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林の遊歩道を歩いていると、向こうのほうからも、知らないおばちゃんがひとり歩いてきます。
私と同じ、散歩のようです。
あちらもゆっくり、こちらもゆっくり。
幅1mほどの歩道を外れないかぎり、そのおばちゃんと すれ違う事になりますね。
普段だと、道路で知らない人とすれ違っても挨拶なんかはしないけど、どうしようかな。
春の草花に目を奪われながらも、こちらに近づいてくるおばちゃんを意識してしまいます。
ちょっと小声で ”こんにちは” くらい言おうかしら。
ところが「やっと桜が咲きましたね」
と声かけてきたのはおばちゃんの方でした。
「そうですね、やっと咲きましたね」
イキな挨拶だ。
もしかしてあちらも、私と同じ事を考えていたのかもしれないのに、
私の方は、ただ小声だけでもという みみっちい小細工だったわ。
『やっと桜が咲きましたね』は、今の道民にとって、きっと一番嬉しい挨拶に違いありません。
自然の中に身を置いてみると、なんだかいつもより少しだけ、心が豊になるような気がします。
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