爺ちゃん　あいぱっと

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豊吉爺ちゃんは、もうすぐ80歳にとどくはず。
目も弱く、足もおぼちきません。それに同じ話しを何度も繰り返えしたりもします。

 

 

昨日の夕方、爺ちゃんちの玄関前を通った時
「おや、ぽぷらさん」と爺ちゃんが、声をかけてきました。
「こんにちは。お元気そうですね」
「な〜んも元気でないって、今の世の中年寄りには住みにくいからよ」

 

 

「畑の季節ですね〜」
「すったら事、するわけね〜べさ、体こわしたって、お国は面倒みてくれねえんだよ、まかたしないべさ（わりにあわないよ）。だいたいよ、今のお国のやり方っちゅうのはよ・・・・」

 

 

うわあ、もしかしたら、ここで捕まっちゃうかもしれないわ。
「それじゃあ失礼いたしま・・・・・んん？」
爺ちゃんは、私の挨拶の終わらないうちに、クルっと回って家に入ってしまいました。
な〜んだ・・・と思ってちょっと家の中を覗いたら、豊吉爺ちゃんが何かを持ってよったよったと出て来ました。

 

 

暗闇から明るい玄関先に現れた・・・・その厚み、大きさ、もしかして・・
「あんた、これ、使ってっかい　あいぱっと」iPad！！
「豊吉さん、これってiPad！！」
「んだあ」
「あいぱっと！」
私の方が、何度も繰り返しちゃったしょ。

 

 

豊吉爺ちゃんは、カバーをカパっと開けると、迷う事なく差し指でポンポンと画面をタッチしました。それから今度は指揮者がタクトを振るように、ちょっと曲がったシワシワな人差し指を、華麗に画面の上で踊らせました。ス〜ス〜・・・・この画面は、動画サイトのユーチューブ！
「こーれが好きなんだなあ・・」
そこにボワンと現れたのは、真っ赤な着物を着た演歌歌手が爺ちゃんの腕の中から、コブシを振り上げて熱唱している姿です。
豊吉爺ちゃん、す、すごい・・・・
「こなら何回も見れるべさ。文字だってでっかく見れるしさ、時間がたつのが早い早い。」
恐れ入りました。
「あ、あの、豊吉さん。今度使い方とか教えてね」
「ああいいよ、もし買うんだったらiPad2だぞ、カメラが2台ついてっから」