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「トントン、婆ちゃん入るよ」
寝てる。ソファの上でいつもの体勢です。
うす目を開けているから起きてるかな・・・と思いきや、寝てるんです。時々まばたきもしています。
口は、”は〜” という形。
少し曲った指は、時々中指をだけがピクピクっと動いてる。
生きてる生きてる、確認完了。
いつもの薬を袋からカサカサ取り出していると、
『母さんか?』と、さっきよりちょっと大きなまなざしになりました。
「そうだよ、薬、ここに置いとくね」
『ども ども』
「ばあちゃん、”ジネ餅” 作ったよ」
婆ちゃんは目をこすりながら
『いやいや今朝ならゴミ飛んで来てひどかったもな〜。オラ拾ってあっちさぶん投げてやったも』と言いました。
「へ〜そう。あのさ婆ちゃん、”ジネ餅” 作ったんだけど、食べる?」
『なにい?』
「”ジネ” がさ、少し残っていたから ”ジネ餅” 作ったんだよ」
『じねえ?』
「ほら、”じね餅” 」
・・・・・・・・・・・・
『なに、ジネ作ったってか!』
お皿を見た婆ちゃんは、いきなり腹筋で起き上がりました。
『どれジネ!』
『ジネ』というのは『エゴマ』の事で、袋には『じゅうね』と書いてありました。雑穀のひとつです。
婆ちゃんや、岩手のおばちゃんたちは、”ジネ”と発音していました。
ゴマといっても形は まん丸のつぶつぶ。
それをミキサーにかけて砂糖醤油で味付けして、お餅にからめてみました。