北海道・札幌発・だべさ通信5

はじめまして故郷

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そのおじさんは札幌生まれの札幌育ち。でも、おじさんがここで暮らしているのは、おじさんの祖父が子供の頃に、曾祖父に連れられて、広島県からこの地域に開拓に入ったからだそうです。北海道は、広島からの開拓移民も多くて、西区には『広島通り』があるし、札幌のとなりには『北広島市』があります。どちらも、故郷の名前を付けたんだね。

 

 

それでこの夏、おじさんは息子と二人で、広島へ先祖の足跡を探す旅に出ました。
「広島に着いてハッとしたよ。親父や爺さんがしゃべっていた言葉が、回りで皆がしゃべっているんだよ。『ありゃーせん』とか『いよーりゃーがる』とか。オレも、物心ついた時にはしゃべってたべさ、だからなんかこう・・懐かしいものを感じたよ」
広島では、曾祖父時代の親戚にも会ったそうです。
「そこで、またびっくりよ。その人達と、俺たちの顔立ちが似ているんだわ。その時、俺は確かに広島の血だと実感したね」

 

 

それからおじさんは、曾祖父の住んでいたという町を尋ねました。
当時の町の名前はとっくにないけれど、このあたりではなかろうかという町をブラブラしていたそうです。
その時、おじさんは見つけました。
「ここだ、ぜったいここだと思ったね。息子が『どうしてわかるのさ』って聞いたから言ってやったよ。」
おじさんは立ち止まって
「おい、見てみろよ。ここ、何処かに似てないか?ほら、オレらが住んでる手稲の町さ」
そこは海が近くて、山の懐に抱かれている平野の町。
「本当だ、すごく似ているね」
おじさんはその景色を見て、曾祖父はきっと、故郷に似たこの風景を見て、自分達が今住んでいるこの場所を開墾しようと決めたに違いない・・と思ったそうです。

 

 

もし私が未開の土地に入って、自分の故郷にも似た場所を見つけたら、きっとそこを選ぶと思う。
新天地に希望を抱いていても、心は故郷にあるもんね。
だから、『広島通り』や『北広島市』と名前が付く。
おじさんは、手稲に似たその町を、故郷のように思ったそうです。
「今度は九州に行ってみるさ、父親が亡くなるまえに『九州にも行ってみろ』って言ってたからさ」
広島で生きたご先祖様は、どうも、九州から来たらしい。
今度は九州に、もう一つの故郷が見つかるかもしれないと、おじさんはひそかに望郷の念を抱いているそうです。

 

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