北海道・札幌発・だべさ通信5

スエさんの故郷が見えるスマホ

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近所のアパートに1人で暮らしているスエさんは、もう80歳をとっくに過ぎているけれど、最近になって携帯電話持つようになったんですって。
私が『すっご〜い!』と言うと、
「見しちゃっかあ?(見せてあげようか?)」と言って、着膨れしたちゃんちゃんこのポケットをまさぐりました。
「ほれ、じゃ〜〜〜ン!」
おお〜!黒い携帯!水戸黄門様のいんろうみたい。

 

 

「自分の電話番号だってわかるんだよ、ほれ」
そういうと、今度はクルっと裏側にひっくり返しました。
またまたおお〜!
大きな文字で090・・・と電話番号の書いた白い紙がセロテープでしっかり貼られています。
聞けば、市内に住んでいる息子さんが、携帯を持たせてくれたのだそうです。

 

 

「わたしゃ生まれが宮崎だからさ寒さに弱いのよ。風邪ひきやすくてさ、これなら寝たままでも息子に電話できるっしょ」
『ん、ん』
「これをカパっと開けてさ、ココのボタンね、押すのさ」
ほ〜〜、スエさん、さ〜すが〜〜。
『スエさんは宮崎なんだ、暖かくでいい所ですよね』
「そだよ〜北川駅のそばさ」
『北川駅のそば??』
「そそ(そうだよ)。疎開で来た人が多くってさ、それでできた駅さ。山があってさあ〜海も近くてさあ〜。蜂食べんだよ、美味しいんだから。こないだテレビでやってたもね。わたしゃフライパンで煎って食べてたけど」

 

 

そこで、私もカバンをまさぐって、スマホを取り出し”宮崎県 北川”で検索・・・・
すると、でたでた、現在の北川駅周辺の風景の写真です。
『ほらこれ、スエさんの生まれた所?』
景色の画面を指でビュンビュンと大きくのばして、スマホを手渡しました。
「そうそう!この山!この形!!この山をさあ、子供の頃駆け回って遊んだのよ。懐かしいねえ〜〜」
スエさんの視線が小さな画面に吸い込まれました。

 

 

とてもうれしそうな顔。
もしかして私、自分ながらいい事したかも??ほほ・・
『やっぱしさあ、これからは
(二人で携帯を見せあって)
携帯電話(ここからは一緒に)「だよね〜」』ブハハハハ〜〜
今度会ったらまた、故郷の写真を検索してあげようかな。

 

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