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フェリーで、私たち夫婦が利用した寝台の向かい側に、ツアーでご一緒した青木さんというお婆さんがいました。
青木さんは、なんと86歳の一人旅。うちの婆ちゃんと同じ歳じゃ!
背負っていたリュックをベッドによっこらしょっと置いて、キャリアケースの変わりの、キャスター付の買い物バッグを足元に置きました。首から下げたデジカメと携帯、短靴にかけた透明なビニールカバー。とても、旅慣れた様子です。
『靴のカバーが素敵ですね』と言うと、青木さんは
「ホホ・・、これ、やっと東急ハンズで見つけたんですよ」と言いました。
と、東急ハンズ!私よりナウいべさ!
青木さんは、トキセンターや佐渡金山の観光の時も、時間内にちゃんとバスに戻ってきたし、階段の多いお寺の見学の時は、最初から階段は登らずに下から見学していました。メモをとり、行く先々でお土産も増えて、いつの間にか、大きなバッグが2つ増えても、気遣う回りの人にお礼を言いながら丁寧に断って、自分でしっかり抱えています。
見学時間を忘れて『何時?何時?』と誰かに聞いちゃう私なんかとは大違いだね。
青木さんは、時々声を掛ける私たちの事を覚えてくれて、すれ違うときには
「どうも・・・」とにっこりしながら自由にあちこち歩いていました。
帰りのフェリーの寝台も自由に選んでいいんだけれど、私たちが部屋に入っていくと、奥の方から青木さんが手招きしてる。
「こっちこっち」あら、ありがとございます。
青木さんは、
「私ね、内地の旅行はもうこれで最後にしようかと思っているんです。皆さんに気を使わしてしまうようになったから」
と言って、でんろく豆をくれました。
私たちの他にも、一緒のツアーの人たちが誰とはなしに ”大丈夫ですか”とか、”荷物持ちましょうか”と声をかけていたもね。
青木さんがツアー参加者の中で一番のお手本なのは、そんな気持ちの現れなのでしょう。
翌日、ラウンジで青木さんに会ったとき、
”ピンポンパンポ〜ン ビンゴ大会を行います”と放送がはいりました。
「青木さん、行きませんか?」
「いえいえ、私はそういうのは・・」
「それじゃあ、一等当たったら青木さんにあげますね」
「ホホ、私の住んでるケアハウスには、そんな大きな物は入りませんよ」
はははは・・・・・
超能力を使っても、ビンゴはさっぱり穴が開かない。
そんな時、ホールのドアがあいて、誰かが入ってきました。
途中参加はできないのに・・・青木さんだ!
こっちこっち・・・手を振って、迎えに行って、一緒のテーブルに座りました。
”え〜つぎは〜Gの24番!!”
なに〜!なして25番にしないのさね〜!
”え~つぎは~Bの3番!!”
げげ〜惜しい〜〜
さて、フェリーは苫小牧に入港し、最後のバスに乗り込みます。
すると青木さんがやってきました。
「どうもありがとうございました。写真、送りますね」
こちらこそ、こんな素敵な歳のとりかたを、できればお聞きしておきたかったです。