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「昨日は葬式だったよ」
久しぶりに電話で話した岩手のおじさんは、切なそうに言いました。
「震災で流された人がようやっと見つかってさ」
その話しに、震災の事を、すでに過去のものにしようとしていた私のずるい心がビクリとしました。
「ほれ、もう、形なんてないからさ、似顔絵を書く専属の人がいてね、そういう人が似顔絵を書くわけさ。
最後に目を入れるんだよ。それを公民館に張り出しすんだけど、それを見た知り合いの人が ”もしや”っと思ったらしいんだよな。あとはほれ、DNA検査をして、やっぱりそうだったって事になったらしいよ。これで、流された家族全員の葬式がやっとできたってわけさ」
おじさんの声は、今だに暗い雲の下をさまよっているかのようでした。
なんだか切ない気持ちになりました。
それから、切ない気持ちだけで済んでる自分が、どんなに幸せなのかとも思いました。
似顔絵に入れられた瞳は、もしかしたら、自分を探しに公民館やってきた家族に「私はここだよ」と訴えて続けていたのかもしれないね。