北海道・札幌発・だべさ通信5

母の日の5円

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お店の広場に花や野菜の苗が所狭しと並んでいると、ついつい足がそっちの方に吸い寄せられちゃう。
二十日カブの種とミニトマトの苗を買って帰ろ。
特設に作られたレジに持って行くと、私より先に会計をしていたのは制服を来た男子中学生でした。

 

 

斜め後ろから見ると、うわあ、台の上にダラ銭(小銭)広げてる。
100円玉、10円玉、1円玉が何枚も。
横に置いてある包みは、彼が買ったカーネーションの鉢のようです。
そうか、母の日ね。

 

 

1円玉を何度も数えているみたい。
「あの、もう少し安いのとかないですか?」
途切れ途切れだったけど、彼は確かにそう言っています。

 

 

”いくら足りないの?”
私が訪ねると、
「え、あの、5円なんですけど・・」
”それじゃあ、これ、どうぞ”
10円玉を、ダラ銭の中に置きました。

 

 

「ありがとございます」
”いえいえ、お母さん、泣いて喜ぶね”

 

 

レジのお姉さんは、ピピっとレジを打ちました。
彼はお釣りの5円のを受け取ると、もういちど、私にペコリと頭を下げってから袋を持って早足で歩いて行きました。
普段は、ひとりで花屋さんになんか来ないだろうに、きっとお母さんへの気持ちが彼の肩を押したんだね。

 

 

お小遣いを計算して計算して、予算内で買えるカーネーションにしたんだろうけど、消費税が8%になっちゃたもね。
ああ、優しい子。彼の後ろに並んだ幸運を神様に感謝いたしまする。
遠ざかるその子の後ろ姿を見ていたら、なんだかこっちのお母さん(私)が泣けてきちゃったしょや。
あ、鼻水も出た・・・

 

 

『お客様、こちらの苗ですね』
”あ、はい、そうです”・・・
優しいあの子を育てた人は、いったいどんな女性なんでしょう。
カーネーションの光景を想像したとたん、またまたジワっと出て来たもので、彼の背中が揺らいで見えました。

 


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