北海道・札幌発・だべさ通信5

病院で聞いた石狩川の話

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病院の待合室。
「石狩川はサケがまあすごかったんだよ」
そんな会話が聞こえてきました。

 

見ると、患者さんとおぼしきお婆さんと、20代くらいの女性看護士さんが窓の外を見ながら話をしています。
「私、石狩で生まれたの。子供の頃からずっと石狩川のそば」
『それでサケの事がよくわかるんですね』
付き添っている看護士さんは、お婆さんの話に いちいちうなずいて聞いています。

 

「昔は、やん衆がいっぱいいて、そりゃあ賑やかでさ。サケがものすごくいたから」
『ヤンシュウ??』
ニシンやサケなど、漁の季節になると沢山集められた雇い人の男たちの事を、北海道では昔『やん衆』と言っていました。
「やん衆さ。サケが穫れる時期になると、いっぱい男の人が集まってきてたわ。サケすごかったから」
『男の人たちのことを やん衆 って言うんですか』

 

「私のお友達の△△さんのちは女郎小屋でさ、そこのうちで、よく遊んだんだよ」
『ジョロウゴヤ??』
お婆さんの子供の頃ってことは、昭和の始めころまでは、石狩には女郎小屋があったってことか???
もう、私の耳はクギヅケです。

 

「女郎小屋ってね、女の人が集められているとこさ。ほれ、やん衆がいっぱいいるべさ。」
『へ〜、そこで、結婚しちゃうんですか?』

 

「ちがうちがう。女の人を買うのよ。みんな内地(本州)から売られてきたんだよ。友達んとこの女郎小屋にも、10人以上はいたね。みんな、地味な着物を着ていたよ」
私は今まで、派手な着物を着ているの女郎小屋の風景を想像していたけど、本当は違っていたのかもしれないと思いました。
『結婚しないで買っちゃうんですか。いくつくらいの女の人が集まっていたんですか?』
お婆さんの真実みのある語り。
うなずいて聞いてる看護士さん。
話は噛み合ないけど、不思議な優しい時間の流れがありました。

 

 

「50歳くらいかな。女郎小屋も、10年くらい前にはなくなっちゃたけどね」
『え、え〜!』
私も心の中で ”え、ご、五十! 50歳っちゅうのはいくらなんでも・・・・私でもギリギリセーフか? ”
おかしい。な〜んか話がおかしい。

 

看護士さんは、
『○○さん、そろそろ病室に戻りましょうか』とお婆さんに話しかけました。
「病室?」
『そうですよ』
「あら、あなた、入院してるの?」
『○○さんが入院中なんですよ』
「わたしって、入院してるの?」
『そうですよ、今日はここで泊まってくださいね』

 

 

話のどのあたりまでが真実なのかはわかりません。
でも、お婆さんが子供だった頃の石狩川には数えきれないほどのサケが群れをなしていて、その漁をするやん衆たちがどんなにか賑わっていたか、という光景を かいま見たような気がしました。

 


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