PR
婆ちゃんと私たち夫婦は、おじさんのお見舞いに、札幌から茨城のホテルまでやってきました。
さっそく到着した時間を見はからってか、おばさんから旦那さんの携帯に電話がかかってきました。
「はい、着きました。え?婆さんをですか?」
携帯電話から、おばさんのトーンの高い声が聞こえています。
婆ちゃんだけでも家に泊めて、一足先におじさんに会わせたいと言っているようです。
「おら泊まらねえ。ダメダメ、明日行くからって」
婆ちゃんはおじさんに会いたいのはやまやまだけど、お宅に泊まるのは不安です。
いくら大丈夫と言われても、夜中に何度もトイレに立つので、知らない家の中で迷ってしまいます。
万が一のためにおむつも当てているけれど、それはそれで、また気を使うのです。
「そうだ婆ちゃん、乗り物酔いになったという事にしたらどう?ね、したら、明日行くという理由になるっしょ」
「んだな」
まもなく、おばさんと娘さんが向かえに来ました。
「来た来た、婆ちゃん布団に入って!」
「来たか!」
婆ちゃんは、今まで腰掛けていたベッドの中に潜り込んで毛布をガバ!コンコン・・
最初に入ってきたのは娘さんでした。
「おばさん、飛行機に酔っちゃったの?」と訪ねました。
婆ちゃんは「あら〜百合子さんどうもねえ(有り難うね)。なんだか気持ち悪くてよ・・おら、明日会いに行っから今日はいいわ」とちょっと か細く言いました。
するとそこへおばさん(おじさんの奥さん)が入ってきました。
「お姉さん!」
「おや、とし子さん!久しぶりだねえ!」
「お姉さん、大丈夫?」
「大丈夫だあ〜、あんたたちに会いたくて北海道から来たさ」
テンションが上がってきちゃいました。
ベッドから起き上がり、楽しい会話の始まりです。
あーでもないこーでもない、話しの花が花盛り。うわあ・・乗り物酔いだったはずが、いきなり治っちゃったよ・・・
「お姉さん!、それじゃあ今晩はウチに泊まりましょ!ね!」
「・・・・・・・・・・・・とし子さん、そりゃダメだ」
「いいじゃないの、ね!」
「いやダメだ、ダメダメダメ!」
婆ちゃんの必死の抵抗に、遂にはおばさんも根負けです。
見送ったホテルの玄関先で、おばさんは私に「お姉さんがあんなに頑固だとは知らなかったわ。ぽぷらさんは大変ねえ」
と、ほとほとあきれ顔。
「いえいえ、それじゃあ明日お宅にお邪魔しますので、ホホホ・・」
婆ちゃんの必死の防衛のおかげで、嫁の私のおカブが、ちゃっかり上がっちゃったとさ。
つづく・・