北海道・札幌発・だべさ通信5

見守ってくれたのね

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仕事の打ち合わせで登別方面に行くという旦那さん。
「登別!!温泉でしょや!行きたいな、ね、婆ちゃん」
「んだな、行くべ」
という事で、途中にある虎杖浜温泉の”湯元ほくよう”という温泉で、私と婆ちゃんを降ろしてもらう事にしました。

 

 

年期のある建物だけど、段差が少なくて休憩所には掘りごたつ式のテーブルやイス、それから洋式のお手洗いがあったので、足の悪い婆ちゃんにはとても助かりました。
浴場も広くてあずましい(くつろげる)し、何より源泉を100%という所がいいね。

 

 

婆ちゃんと一緒に洗い場の横を通った時、ちょうど体を洗っていたおばちゃんが、自分の後ろを通る私達に気づいて、シャボンの落ちている床をシャワーでザーっと流してくれました。
あら、ありがとうございます。
おばちゃんは、ゴシゴシ体を洗いながら「あ、いえいえ」と言いました。
気のつくおばちゃんだね。私だったらおかまいなしに、自分の事だけジャバジャバやって、後ろを歩く人の足元など考えもしないだろうに。

 

 

婆ちゃんが湯船に浸かっている間に、私はササっととアカこすりをする事にしました。
アカこすりをしているあいだ、チラっと婆ちゃんを見ると、婆ちゃんはひとりで湯船から上がろうとしています。
お風呂場で転んだら一巻の終わり、急いで婆ちゃんの所まで行きました。
その時、視界に入ったのが、さっき床を流してくれたおばちゃんです。

 

 

おばちゃんは、婆ちゃんの少し離れた所に浸かっていて、ひとりで上がろうとしていた婆ちゃんを見て、手をかそうと湯船から動き出そうとしていたのがわかりました。
でも、私が先に婆ちゃんの所に着いたので、何事もなかったように、また天井を眺めています。

 

 

もし私が気づかなくっても、彼女が手を貸さなくても、婆ちゃんは多分ひとりで湯船から上がれたでしょう。でも、誰かが見守っていてくれる事は、とてもありがたい事ですね。
自分では気づかないだけで、実はだれかにそっと見守られていた事が、人生の中ではきっと星の数ほどあったでしょうね。
私もこんなイケてるおばちゃんになりたいと思いました。
ばあちゃんは私につかまって「母さん、上がるぞ」と言いました。「はいはい」
私はそのおばちゃんに、「どうもありがとうございました」と声をかけました。
天井を見ていたおばちゃんは、「あ、いえいえ」と言って、不思議そうにこちらを見てから、なた天井を見上げました。

 

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