北海道・札幌発・だべさ通信5

記憶力の逆転

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そのおばちゃんは、私の顔を見て言いました。
「ちょっと奥さん、わたし、奥さんの顔、どこかで見た事があるんだけどなあ」
はあ?私には記憶がないなあ。
同じ手稲だもの、買い物途中で見かけたりした事はあったかもしれないけれどね。
私には、ぜ~んぜん記憶がないから、きっと、別の人と勘違いしているんだわ。

 

 

普段、こういう場合は、だいたいにして私の方が記憶違いという場合が常だけど、
私はこのおばちゃんよりはうんと若いのだから、記憶だって私の方がいいに決まってる。
だから多分、75%の確率で私の方が正しいというものです。

 

 

けれど、そこはほれ、一応、年上に気を使ってさ
「そ、そう言えば、私もどこかでお目にかかった事があるように思うのですがちょっと思い出せなくて・・・」と答えました。
お互いに思い出せないのだから、おばちゃんはこのへんで引き下がるだろうと思いました。

 
けれど おばちゃんは、
「そうだよね~、どこだったかね~」と、ちょっと体を反り返し、目の玉を上から下に、下から上に動かしました。
「思い出せなくてすみません、それじゃあ・・」

「あなた、もしかして。陶芸教室にきていた奥さんでしょ!」
ええ~!!
「そ、そうです!その時ご一緒だったんですね」

 

 

おばちゃんは、胸のつかえが降りたかのように、右手を私に向かってポイっと一度手招きをして、
「やっぱし~~~!!」と言いました。
そ、そうだったのか。陶芸教室には、私の他に、先輩おばちゃん達が7.8人参加していました。
みんなでテーブルを囲んで、わきあいあいやっていたのにさ、しかも、今まで2回は会っているはず。なのに、私は人の顔をな~んにも覚えていないんです。
ああ私って、今さらだけど、ほ~んと、鈍感。
75%の確率で自分の方が正しいと自信もっていたのにまさかの逆転。実は残りの25%の方だった!
私って・・・私って・・・・・・・まいっか、こういう時は忘れちゃお。

 

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