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平成八年の冬、豊浜トンネルの大規模な崩落事故が起きたのは、古平(ふるびら)の町を出てすぐの所です。
大きな岩盤が崩れ落ちて、トンネルの中にいた車とバスが巻き込まれました。
その日は札幌の雪祭りを見に行くために、バスに乗った人もいたそうです。
古平の町にとって、ほんとうに大きな悲しみでした。
大きなバスは岩の重みで、たったの1メートルの厚さになったと言われていますが、事故後、シートをかぶされたそのバスを乗せて走るトラックと偶然に国道ですれ違いました。
当時の事は、今でも忘れる事ができません。
岩にしみた水は、冬になると凍って膨張し、ちょっとだけ岩を押しのけます。
小さな亀裂ができると、またそこに水が入り込み、冬になると凍って膨張する。
それを繰り返す事で、氷はだんだん大きなクサビとなって、ついには岩を崩してしまうのだそうです。
当時の豊浜トンネル事故の現場近くに、慰霊碑が立てられています。
『平成八年二月十日午前八時十分頃一般国道二二九号
豊浜トンネル古平側坑口付近で高さ最大七十米幅最大五十米
体積一万一千立方米に及ぶ大規模な岩盤崩落が発生し 同時刻に通行中の路線バス及び乗用車各一台が被災し
二十名の尊い命が失われるという悲惨な大事故が起こった
巨岩に閉ざされ埋まる被災者の安否を気遣い一刻も早い救出を願って凍てつく寒さの中
夜を徹して八日間にわたる懸命な救出作業が行われた
しかしながら 家族や国民全ての願い 祈りもむなしくこの崩落によって犠牲となられたことは災禍というには恨みて余りあり
まことに悲運というより言葉もない いたましくもかなしい犠牲者のご冥福を祈り
悲しむべき教訓として永遠に生かし伝えるため
この碑を建立したものである
合掌』
この場所はちょうど、犬の伝説がある所でもあります。
そばにある岩、犬が遠吠えをしている形に見えませんか?
『昔、ラルマキという村の若い漁師が、一匹の犬を飼っていた。
漁師は、犬を可愛がり犬も主人によくなついていた。
ある時、海が久しぶりになぎになり、漁師は仲間と共に沖へ漁に出た。
犬はいつものように海辺で主人の帰りを待っていた。
ところが、朝は穏やかであった海が、いつの間にか波が高くなり、日暮れとともに暴風雨となってしまった。
村人は、海辺でかがり火を焚いて無事を祈った。
やがて、何を逃れた漁師が浜に帰ってきたが、犬の主人は、ついに帰って来なかった。
暴風雨は何日も続いたが、犬は浜辺で待っていた。
そして、ある夜、悲しげな犬の遠吠えが、いつまでも聞こえていたという。
よく泡、暴風雨はやんだが、海辺に犬の姿はなく、岬に、犬の遠吠えをした形の岩がこつ然とそそり立っていた。
人々は、その岩を『セタカムイ』(犬の神様)と呼ぶようになった。』