運転手さんも買い物ね

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病院帰りのタクシーで、婆ちゃんが「せんべい食いたいなあ」って言いました。
それじゃあ近くのスーパーに寄り道してもらおうか。
「すいません、５、６分くらいで戻りますから」
「はい、わかりました」
婆ちゃんをタクシーに残して、私は急いでスーパーに。
早く戻らないとタクシーのメーターが上がっちゃうもんね。

 

 

ササっとおせんべいをカゴに入れました。
あら、こっちのおせんべいも美味しそうでしょや。おや、キャベツも安いわね、あらなにお刺身も特売！
いけない、メーターが上がっちゃう。とにかく、早く戻らなくっちゃ。
小走りでタクシーに戻りました。
「すいません・・・」あら？運転手さんがいないわ。
婆ちゃんがポツンと一人だけです。
「運転手さんは、なんか買いに行ったみたいだぞ」

 

 

あらま、メーターが上がったら、ややこしくなちゃうしょやね。
と思ったら、向こうから袋をぶら下げて突進してくるのは運転手さんです。
「いやいやどうもどうも　すみません。ここにしかマトン（大人の羊肉）の生肉が置いてないもんで、ついでにと思いまして・・」
「へえ、そうなんですか？」
「そーなんですよ、最近は何処に行ってもクセのないラム（子羊の肉）ばかりですよ。どうもマトンは、あの匂いが敬遠されるみたいで。だけど、やっぱりジンギスカンはマトンでなきゃ」
「お〜、運転手さん、ジンギスカンのツウですね」
無口な運転手さんのテンションが上がりました。

 

 

「お客さん、今のベル（食品）の（ジンギスカンの）タレ、甘いべさ。私は昔の三角のビンに入っていた頃の辛い味が好きでねえ。え、知らないんですか？三角のビン。そうですか〜」
聞けば、当初ベル食品で販売していたジンギスカンのタレを入れていたビンは、底が三角だったそうです。
「運転手さん、根っからの道産子ですね」
「いやいや　なんもですよ」
気をよくしたのか、それとも申し訳な

 

いと思ったのか、タクシーはカーブをサーフィンのように滑らせて、私と婆ちゃんはそのたんびに肩を仲良く斜めに倒しました。
・・・などという間に、もうすぐ家に到着です。
直前でメーターのメモリが上がっちゃうかも・・・・・・・・・・
上がりませんでした。ま、いっか。

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