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ふいのお客さんに、婆ちゃんはうれしそうです。
”それじゃあそろそろ失礼しなくちゃ”
お客さんが腰をあげようとすると
婆ちゃんが私に「母さん、ニシン漬け持たせてやれ」と言いました。
恐れていたそのセリフ。
実はニシン漬け、おととい、最後の大盛り出して食べたばっかしだったのだ。
いま樽の底に残っているのは大根ばっかしが少しだけ。
本当だったら、美味しく漬かっているときに
”これどうぞ、食べてみて下さい ホホホ”
なんて言って、嫁をアピールするチャンスだったのに。
「それがちょうどなくなってしまいまして」と言うと
「したら粕漬けもあったべさ、あれ持たせれ」婆ちゃんのダメ押し。
わわわ、そうもきたか。
それがさあ、今年の粕漬け、ちょっとしょっぱかったんだなこれが。
味の調節に挑もうかと迷っていたところであったのだ。
仕方ない。こうなったらしょっぱい粕漬でも差し上げるしかない。
「あのこれ、しょぱくて、ごめんなさいね」
ああ、できればこういう嫁のへたくそは隠しておきたかった。
たまには上手にできる時もあるんだけどね。