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「えーと、オレはいったい今、何をしようとしていたんだっけ?」
旦那さんは、ちょっと別な会話を挟んだとたんに、やりかけの仕事を忘れてしまったらしいのです。
「なんだっけ、なんだっけ!まいったなあ」
仕方ないしょや、そのうち思い出すわよ。
もう、そんな事ぐらいじゃ驚かないもんね。
お昼を過ぎた頃に、幼なじみのせいちゃんがやってきました。
「美味しいそば屋があるの知ってる? えーと・・・えーと・・・・あれ、店の名前なんだっけ」
ほらきた。
「え〜と・・ん〜と、あれ、なんだったっけ・・思い出せない〜」
まあ、ゆっくり思い出せばいいんでないかい。
「そう言えばさぽぷらちゃん、いつだかみんなで行った居酒屋覚えているかい?」
「あ〜あ〜あの店ね、たしか”北海屋”だよね」
「ぽぷらちゃん、そりゃ違うよ〜」
「え〜、違わなくないしょや、ねえお父さん”北海屋”だよね」
旦那さんは首を横に振って「違うって・・・」
え〜!絶対にそうだと思ったんだけどなあ。でも、旦那さんもせいちゃんもそう言うのなら、やっぱり私が思っていたお店とは違うのかな。
もう、会話の流れがギクシャク状態です。
それはほんの瞬間で、世界は考えられないほどのスピードで変化するらしいのです。
やりかけの仕事は消えてしまうし、ソバ屋さんの名前は消えてしまうし、だいいち、なして私の知らないうちに、居酒屋さんのお店の名前が変わるわけ?
それはきっと魔法の呪文のせいだわね。
「なんだっけ?」とか「え〜と」とか「あれ?あれ?」の呪文には、時空を動かす凄い力があるらしいのです。
あれ〜〜っ!!ほらね、 買い物袋の中に、買ったと思った卵が入っていないもの。