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遠縁にあたる叔母が数年ぶりにやってきました。
彼女は子どもの頃から体が少し不自由だったそうで、仕事一筋、生涯独身です。
私が嫁に来たばかりのときは、姑世代にもかかわらず、現代的な考えを持った女性だわと思ったものです。
「私も、もう78だしね。いつお迎えがくるかもしれないから雪が積もらないうちに来ようと思って」
近況の話に花を咲かせているうちに、あっという間にあたりが暗くなりました。
「次の免許の更新までは、車を乗り続けたいんだけどね。あらもうこんな時間、おいとましなくっちゃ」
若い頃から車を運転していた叔母でしたが、そろそろ限界を感じ始めているようです。
立ち上がろうと杖にしがみついて床をグイっと押すと、大きな体をゆだねられた杖は、震えながら、左右にゆらっと動きました。
「大丈夫よ大丈夫、これでもちゃんと歩けるんだから」
玄関では杖を動かして、靴を器用に足元に寄せました。
そこから車まで、小さい歩幅でやっとたどり着くと、車のドアを開け、まず杖を向こう(助手席)にポンと投げ入れる。
ドアにつかまって、左足をゆっくり運転席に入れると、ドカっとお尻を下ろしました。
「大丈夫、大丈夫。車に乗るのは平気なの」
よいしょよいしょと体をねじ込むように車内に入り、テーブルクロスのように広がったスカートを車内に引き寄せ、やっとドアをパタンと閉めました。
車はゆっくりとバックして通りに出ると、助手席のドアがスーっと開く。
「じゃあねえーーバイバイ」
ビュ~~~~ン・・・・はやっ。
運転、大丈夫かな・・・・
でももし車がなくなってしまうと、買い物も病院もタクシーを使わくっちゃいけなくなるね。
札幌まではどうやって来る?
JRの駅まではタクシーに乗ったとして、広い駅構内を、あのふらついた杖だけで歩けるのか。
荷物はどうする・・・・そんな事を考えると、なんだか複雑な気持ちになってしまいました。
もしかしたら、叔母はその答えを出すつもりで、ここまでやってきたのかもしれない・・・と、ふと、そんな思いがよぎりました。
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