キンカンのこと

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「昨日の夜中に、蚊に刺されちゃったんです。そういう時はキンカン塗るのが一番ですよね」
髪をチョキチョキ切りながら、若い美容師さんが言いました。
へー、若い人も虫さされにキンカンを塗っているんだ。今でも根強い人気なんだね。

 

 

とは言っても、今のキンカンはシャレた形をしているっしょ。昔のはちょっと違ったもんね。
ビンの形は縦に平たくて、なで肩をしていました。
それからね、フタにすごい仕掛けがあったの。
水泳帽みたいになってるゴムのフタで、それをめくりながら取ると、なんとそこには、こうや豆腐みたいなスポンジがくっついているではありませんか！
クルリと裏返った帽子のゴム部分をつかんで、液のしみたそのスポンジ部分を、患部にソロ～リソロ～リ塗るわけです。

 

 

スゴイ！
この仕掛けを考えた人は、尊敬しちゃう、と子供心に思ったよ。
キズに付けると飛び上がるほど痛いのに、何度でも試したくってやったもね。患部が多少汚れていてもな～んもさ。
それでスポンジの方が汚れたってな～んもさ。
それから、あのキョーレツな匂いの、いったいどれくらいまで近づけるか、って、ビンに鼻を近づけてみた事もあったっけ。

 

 

今夜は雨上がりのせいか、とっても過ごしやすい気温です。
この夏も大活躍したであろうキンカンも、そろそろ仕事納めかな。
私の腕のポチっと赤い小さな腫れも、気づかぬうちに、だんだん消滅してきたね。