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美容室のドアをあけたら、
「ぽぷらさん」と声をかけてくれたのは、3年も前に私の髪をカットしてくれていた美容師さんでした。
「こちらにどうぞ」
シャンプーした私の髪をタオルでワサワサふきながら、育児が一段落したので復帰したという話しをしてくれました。
それから「私の旧姓は珍しい名字だったんですよ。子供の頃はいじめられた事もあったんですけど、私の結婚で、その名字が北海道から消えちゃうらしいんです。そうなると寂しいもんですね」と言いました。
わかるわ〜。
私もね、旧姓は珍しい名字で、しかも漢字すら、当初のパソコンには出てこなかったんです。
初対面の方に
”お名前は?” と聞かれるので ”○○です ” って言うっしょ、したらたいていは
”○○さん?” と聞き返してくる。
”いえいえ、○○です” と言うと、 ”○○さん?”
”字はどう書くんですか?え?なに?”
こんな事の繰り返し。
名字は嫌いじゃなかったけれど、説明が面倒だったもね。
それに、悪い事をして新聞に載ると私だとバレるし、家族に迷惑かけちゃうので、真面目に生活したもんね。
それが結婚したら、石を投げれば当たっちゃう名字でさ、名前がこれまた昭和の超普通。
新聞に名前が出たって誰だかわかんないかもしれない。
ところがさ、多い名字でも困る事があります。
近所に同姓同名の方がいるらしく、以前はよく郵便物が間違って届きましたし、
病院などで名前を呼ばれる時は、あっちの方でもハイって返事がする事があります。
だから名字を呼ばれても、一度は黙って様子を見る。
誰もいなかったら、あら私?みたいにおもむろに立ち上がるってわけ。
彼女は今だに、今の名字に戸惑っているそうです。
でも、大丈夫だと思う。
女は、旧姓で呼ばれた時と、結婚後の姓で呼ばれた時とで、瞬時にスイッチを切り替える能力を持っているのだから。
とはいえ、名字が消えちゃうのは寂しいね。
せめて自分が生きているうちは、珍しい名字をつけたご先祖様に、思いをはせてみたいものです。