北海道・札幌発・だべさ通信5

婆ちゃん うつろにサバをよむ 

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女性の看護士さんが婆ちゃんに訪ねました。

「こんにちは~。調子はいかがですかあ?」
婆ちゃんはホホっと笑ってから
「いいですよ〜、ただ、歩くとこわい(しんどい)んだなあ」と言いました。

 

 

「そうですか。あと、痛い所とか、ありますか?」
「ヒザが痛いねえ、あと ”こんじょ”(根性=性格)」プハッ
と言って、右手でベシっと宙をきる。
でました、婆ちゃん得意の1人ウケジョーク。

 

 

「フフフ・・・それじゃあ自分のお名前を言ってください」
「はい、あきよです」

 

 

「そうですね。それじゃあ生年月日言えますか?」
「昭和2年・・スラスラ・・」

 

 

「わあ、すごい!スラスラ言えちゃいましたね。それじゃあ今何歳なんですか?」
「・・・・・」

 

 

婆ちゃんは普段、人に歳を訪ねられると、本当は86歳なんだけど90歳と答えます。
そうすると、大抵の人はびっくりこいて、”すご~い、元気ですね~~~!』と言ってくれます。
たぶん、自分でも85だか6だかわかんなくなっちゃって、90歳と言うんじゃないかと思うのです。

 

 

「あきよさんは何歳ですか?」
「え~と・・・・・」

 

 

「お歳は何歳ですか?」
「え~と・・76だったかな?」
あれま、そんな若いとは知らなかった。

 

看護士さんは笑って
「あきよさん、もうちょっとあるんじゃないですか?」と訪ねました。
そのとき、婆ちゃんは私の方をチラリと見ました。

 

私が ” おばあちゃん、歳、いくつ? ” と訪ねると、
「・・・・78さい?・・・・」

 

 

その場はみんなで大笑い。
でも、婆ちゃんのその時の目は、確かにうつろな、追いつめられた時の目のように見えました。
ま、いいさ、サバをよむのはいい事だよ。

 

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