北海道・札幌発・だべさ通信5

婆ちゃん、再会

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「日高のほうにな、タカシ婆さんのいとこがいるらしいんだ」と旦那さんが言いました。
”タカシ婆さん”とは、旦那さんの祖母の事です。
え〜!タカシ婆さんのいとこっちゅう事は、もう100歳くらいになっているんでないの?
「いやいや、いとこと言っても。歳は婆さん(我が家の婆ちゃん)よりちょっと上くらいみたいだよ」
という事は90歳にもなるのかな。

 

 

旦那さんは子供だったので記憶はあまりないけれど、婆ちゃんは嫁として会っているのでよく知っています。
「たしか、2年前にきた年賀状があったな」
見ると、ハガキには高齢のご夫婦が写っています。ヨネさんはニットのカーディガンを着て、襟元にはリボンがついています。
吉次郎さんはジャケットを着ているね。よそ行きのスタイルかしら、2人ともちゃんと並んでニッコリしています。ハガキには『2人とも元気です』と書いてありました。
「ねえ婆ちゃん、タカシお婆ちゃんのいとこは、このご夫婦の、お爺ちゃんの方?それともお婆ちゃんのほう?」
「さあ、どっちだったか忘れちまったなあ。でも、おら会いてえなあ〜」
行ってみっか!思い立ったが吉日です。

 

いとこさんご夫婦の住んでいる所は、サラブレッドの生産地で有名な日高の富川という所。
幸いにも、我が家のある手稲インターから高速にのれば終点は富川。1時間30分あればらくらくです。
電話電話・・・・・ピッポッパ・・・・・留守だな・・・もしや長期不在かな・・まさか・・・
と、とりあえずドライブがてら行ってみよう!

 

 

はたして到着したその家は、草がのびのび育っている一軒家でした。
カーテンが少し開いているね。それに自転車もあるよ。
旦那さんがまず、ひとりで訪ねてみる事にしました。
チャイムを押しても出ない様子、やっぱり留守か。するとご近所に車が止まりました。
旦那さんは、そのご近所さんに我が家に来た年賀状を見せて、訳を話しているようです。
車に戻って来た旦那さんに、婆ちゃんがすかさず「どうだ?」と聞きました。
「ヨネさんは、この春に亡くなったそうだよ。」
それを聞いた婆ちゃんはちょっと無口になりました。
「爺さんは2.3日前には姿を見ているそうだけどなあ」
少し開いたカーテン。置いてある自転車。洗濯物。や、やだなあ〜重っ苦しい空気が車内を漂うしょや・・・・
「と、とにかくさ、後でもう一度寄ろうよね」
「そうだな・・・」
私達はひとまず、ここから近い『門別温泉とねっこの湯』という温泉に行く事にしました。

 

 

さて、再び訪れた頃には、あたりは暗くなり始めていました。
カーテンはさっきのままです。あ、誰か動いた!いるみたいだよ。
「まずオレが行ってくっから、婆さんは車にいな」旦那さんはそう言って玄関に向かいました。
もう40年以上も会っていないから、忘れてしまっているかもしれないもね。
戸が開いて、中に入ったようです。
「いたな・・・・」婆ちゃんが独り言を言いました。

 

 

しばらくして、旦那さんが小走りで車にやってきました。「婆さん!覚えていたよ、(家に)あがんなって言ってるよ」
婆ちゃんは、車の戸を開けてもらうと、サっと杖を外に出して、旦那さんと家に入って行きました。私はお邪魔せずに待つ事にしました。
30分も過ぎたころ、車に戻った婆ちゃんは、「あ〜らどっこいしょ」と言ってシートに座ってから、「吉次郎さんにだけでも会えていかったわ。だけども、おら、な〜にしゃべってんだか、よくわかんなかったべさ」と言いました。
「ねえお婆ちゃん、それで、タカシ婆ちゃんのいとこって、吉次郎さんかヨネさんかわかった?」
「さあ、どっちだか、おら聞かなかったも」
そっか、ま、どっちでもいいよね。

 

 

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