北海道・札幌発・だべさ通信5

婆ちゃんのプチゴージャスなブラウス

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大きなショッピングデパートに、婆ちゃんが甥の結婚式に着る、ちょっとゴージャスな服を買いに出かけました。
もう、着物を着るのは高齢の婆ちゃんには大変です。
「おら、もう歩くのゆるくないも(容易じゃあないもの)」
と弱気な婆ちゃんに、私も義姉も、”ちょっと素敵な洋服にすればいいよ”と言って婆ちゃんを誘ったのでした。

 

 

「したら行くべ」
「試着する時は、洋服脱ぐかもしれないよ、大丈夫?」と義姉が婆ちゃんに聞きました。
すると旦那さんが「婆さん、靴下は大丈夫か?こないだ履いてた5本指の靴下、あれ、小指に足が入ってなかったべや」と言うと、婆ちゃんは、「ありゃ、靴下がヘンだったんだべよ。シャッツ見られるのか?爺さんのシャッツ着てられねえな。ももしきも見えるべか、爺さんのももひきやめてくるべ」と言って、支度を始め、約40分かかって出発です。

 

 

さて、いつも横目だけでチラリとしか見ないフォーマルブティック。
その領域に入ると、なぜかしら3人ともよそ行きの顔です。
「いらっしゃいませ。お母様のお洋服でいらっしゃいますか?」
義姉が、「え、ええ、およばれに着たいもので」と言うと、店員さんはすぐさま素敵なブラウスを2点用意してきました。

 

 

「着てごらんになりますか?」
婆ちゃんは、「そうね」と言って、私達の方をチラっと見ました。
薄いグレーの伸縮素材のブラウスと、黒地に白い花柄プリント、どちらも素敵だけれど、婆ちゃんにはびっくりするほど黒のブラウスが似合っています。襟元のフリルがプチゴージャスです。
「これ、似合ってるわ、ねえ」
「んん、これいいわ」
「私も(普段は”おら”と言う)これがいいわ」
「ありがとうございます。お値段はこちらでございます」
◯万○○円!!・・・

 

「お婆ちゃんが気にいったのならいいんじゃない?ねえお義姉さん」
「そうだよ母さん、これ、どう?」
婆ちゃんはすまして
「そうね、これいいんじゃない。頂こうかしらね」と言いました。
「ありがとうございます、ではお会計はこちらで・・・・」

 

 

たまにマダムになるのもいいもんです。
足の運びも変わっちゃうね。
それにしても、素敵なブラウス。婆ちゃんがあんなに似合うとは。
事務所に戻てから、旦那さんに報告です。
「婆ちゃんも、なかなかすてたもんじゃないよ」
すると旦那さんが、婆ちゃんの履いていた靴下に気づきました。
「婆さん、なんだそれ」
5本指の靴下が、まだら模様になっています。
「ああ、これな、洗濯の時にブリーチ入れたベ。したら色抜けたべや」
婆ちゃんは、三毛猫色に変色した5本指靴下の指をピョコピョコっと動かしました。

 

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