PR
新千歳空港から茨城空港までは、おおよそ1時間25分くらいです。
離陸後の飛行機からは、室蘭の白鳥大橋や、函館の飛行場などがジオラマパークのように見えました。
でも津軽海峡を超える頃になると、海の上にはオブラートをかぶせたように、薄く雲がかかり始め、本州の上空にさしかかる頃には、、洗濯機の中で回るシャボンのようなモコモコした雲で陸地が完全に覆われてしまいました。
そこはもう、雲海の空がどこまでもどこまでも広がっています。
しばらく無言でず〜っと外を眺めていた婆ちゃんは、
「母さん(私の事)、ありゃ雪か?」と聞いてきました。
「お婆ちゃん、これは雲だよ」と言うと、
「ありゃそうかい。おらまた雪だと思ったもなあ。んだべ、おかしいと思ったも。あらやだ、雪なわけないもな。はっはっは、んだべ〜」勘違いした自分にウケたらしく、私の腕をベシベシ叩いてひとり大ウケ。リラックスしてきたかな。
そのうち、飛行機は、魔の三角海域に迷い込んだかのような霧の中に包まれていきました。
ポ〜ン
”皆様、当機はまもなく着陸態勢に入ります。揺れる事が予想されます。シートベルトを今一度、お確かめ下さい”
婆ちゃんの顔からは再び笑顔が消えて、がっちりシートと一体化。
ドン!と飛行機のタイヤが地面に着いて滑走路を滑ると、いつもは曲がっている婆ちゃんの背中は、ピンとまっすぐになりました。
「着いたね、ご苦労様でした」
私達は、乗客の最後に降ります。
『寒くないですか?大丈夫ですか?』と優しく声をかけて下さる乗務員さんたちは、婆ちゃんの手をとって、ヨイショ,ヨイショとかけ声をかけながらタラップを降りました。下には車イスも到着済み。
あとは車イスを押してもらってロビーまで移動しました。
「おら飛行機で来てよかったあ」
「飛行機って早いもね」
「早いしさ、飛行機の人が、こんなに私に尽くしてくれるんだも・・・」
あまりの手厚い心遣いに、ばあちゃんは感激ひとしおです。
何度も何度も「どうもどうも」を繰り返して、今度は空港からレンタカーに乗り換えです。
あら、病院の先生からもらった酔い止めの薬、婆ちゃんに飲んでもらうの忘れてた・・・まいっか、ここまで来たも。