記憶の試験に 婆ちゃんも私も必死だべさ

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今日、婆ちゃんが見てもらったお医者さんは、いつもの心臓の先生ではありません。
ばあちゃんは時々、記憶に雲がかかってしまうようになったのです。
待ち合い室にいるあいだ、婆ちゃんは
「きっと、”今日は何日か”とか聞かれるんだべ？父さん（旦那さん）が言ってたわ」
と言いました。

 

 

「きっとそうだよ、婆ちゃん今日は何日かわかる？」
「6月か？」
「いやいや4月だよ、今日は4月の26日」
「そうか」
もしこの質問がでても、練習したからバッチリだね。

 

 

まもなく呼ばれて入った診察室には、カチャカチャとパソコンを打ってる試験官のような先生がいました。
「え〜、これから私の言った事を覚えて下さい。桜、ネコ、電車、はい言って」」
私も婆ちゃんも必死で覚えました。
最初は桜だよ・・・婆ちゃんはなんて答えるかな。
「桜・・・」よしよし
先生は無言で、婆ちゃんの顔よりパソコンをカチャカチャ打っています。
「え・・・っと、ネコ」・・そうそう
カチャカチャ・・・
「電車」
おお〜婆ちゃんいい調子だよ〜！！
っていうか、一緒に考えた自分も正解した事に安堵しちゃったしょや。
覚えられなかったらどうしようかと思ったも。

 

 

「お婆ちゃん、では今日は何月何日？」
そらきた、さっきの練習の成果を見せよ。婆ちゃんは私の方をチラっと見てから
「4月の・・・」そうそう
「27日？」あちゃ〜
そのあとは、『時計の10時10分を書いて』とか『100-7は？』とか、次から次と問題が出題されました。
私も100-7を解くのにプチ必死。
最後に先生は、「さっき覚えた３つの物を言ってみて」と聞き返し、婆ちゃんは
「私は頭悪いから、わかんないもんねえ」と答えました。

 

 

明日から私達夫婦は、婆ちゃんと叔母（婆ちゃんの妹）と一緒に、岩手の婆ちゃんの実家の法事に向かう予定です。
車イスを持参して、苫小牧から秋田行きフェリーに乗ります。
当初は旦那さんだけ出席するつもりでしたが、”行きたいなあ”と言う婆ちゃんの気持ちを叶えてあげたいと思い、私も付いていく事にしました。
婆ちゃんが津軽海峡を渡るのは、きっとこれが最後でしょう。