麻酔します

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「ぽぷらさん、歯医者通ってるの？」
「うん、通ってるわよ」

 

「歯医者さんって、怖くない？」
「え、ええ、ちょびっとかな～」

 

「私、怖くて怖くて、下唇が震えちゃうのよ」
「え！松代さんも？」

 

私は歯医者さんに歯をいじられるくらいなら、な～んもだし、デレンと寝ていられる事は、むしろらくちんなくらい・・・なんだけど・・
唯一、診察台の上で、このプリンみたいな体を振るわす一言がある。
それは
『では麻酔します・・・・』

 

この、『では麻酔します・・・・』の一言が、途端に私の下唇を震えさせ、それを隠そうとするあまり、手も足も死後硬直のように固まっちゃう。足の指はクマデみたいにまっすぐ伸びて、手の指はお腹の上で不規則に折り曲がったままになる。
この歳で、こんなに緊張する大人なんて、そうはいないに決まってる。だからちょびっと恥ずかしい。・・・・そう思っていたのです。
でも、私だけじゃなかったんだ！！
「そ、そうだよね～、下唇、震えちゃうよね～、どうしてなんだべね～」ワキャワキャ

 

そりゃね、今の注射は昔と比べて、お天とうさんと番頭さんくらい痛くないのはわかっているのですよ。
わかっているにもかかわらず、『では麻酔します・・・・』の一言が、私にスイッチ入れちゃうのさ。
もう、その一言は言わなくっていいっちゅうの。黙ってサッサとやっちゃえば。
だからお願い歯医者さん、私にその一言は言わないで。