いたましいニシン漬

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親戚のおばさんがやってきました。
婆ちゃんは、つい2.3日まえまでコンコンと咳がでていたんだけれど、今日は調子がいいみたいで久しぶりにやってきたおばさんと話しに花が咲いているようです。
ちょうどよかった、ニシン漬が美味しくできたので、大きな器に入れて出す事にしよう。

 

 

さっそく物置の樽の底からむんぎゅとつかんで、鉢のような器に盛りました。
「ニシン漬けをつけたんですよ、どうぞ」
「あらあら、そうかい。どれどれ・・・」
おばさんは、左手を箸の下にそえながらニシンを一つつまんで食べました。
「あら、しょっぱ過ぎず美味しいねえ」
そうですかあ、おほほほ、偶然にもうまくできたんですよ。
おばさんは、やはり箸に手をそえながら、今度はキャベツをつまんで口に放り込むと、パリパリパリといい音をたてました。

 

 

それを見ていた婆ちゃんは、おばさんに
「うんまいべえ、帰りに持っていきな」と言いました。
え、婆ちゃん”帰りに持っていきな”ってさ、あんまり沢山作ってないんだよ。しかもさ、こんなに美味しくできたのに、いたましいっしょや（もったいないでしょ）。
そんな私の気持ちも知らず、ばあちゃんはさらに元気よく「母さん（私の事）、ニシン漬け袋に入れちゃんな」なんて言う。
「そ、そうですね、今、袋用意しますから　ホホホ」
おばちゃんは、
「いやいや、たくさんだよ（しないでいいよ）ここにあるのをご馳走になっていくからから」と言いました。
ほっ・・・・・助かったかも・・・
したっけさ、婆ちゃんたらさらに大きな声で「な〜んも遠慮しないで持ってけばいいべさ！」だって。
「そう〜、それじゃ遠慮なく頂いていくね、悪いわね」

 

 

あ〜あ・・・せっかく美味しく漬かったのにな。ニシン漬けは、あと食卓3回分くらいしかありませんでした。なのにあげちゃうなんて。小さな樽の底から、またもやむんぎゅとつかむと、そこだけ随分減った気がするな。
もひとつつかめば、底に手が届いてしまいました。ああ〜いたましい〜〜〜。
袋に詰めながら、大根をつまんでバリバリバリと食べました。
もひとつ、今度はニシンを食べました。ついでにキャベツもパリパリパリ。
いたましいなあバリバリバリ。
もう一度作ろうかな。そんな事を考えながら袋に詰めていたら、なんだかお腹がいっぱいになってきちゃっいました。