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「お婆ちゃん 元気ですか」
タクシーの中で、運転手さんが声をかけてくれました。
『それがね運転手さん、パタパタっと体力落ちたもねえ、歩けないのよ』
「足はしかたないわ、歳だも」
『頭も、パタパタっと落ちたのよ』
「そんだけ喋べれればたいしたもんだべさ。もうちょっと若けりゃ、お婆ちゃんを口説いちゃうかもな」
『ほほほ・・・今しゃべった事もす〜ぐ忘れるんだよ。これ、ボケだべね』
そうは言っても婆ちゃんはちょっぴり嬉しそう。
さすが運転手さん、会話は慣れているね。
「なんもだって(たいした事はないですよ)。おばあちゃん、ご飯だって美味しいんだべさ」
『ご飯も食べんだけども、パタパタっと体力が落ちたもねえ』
運転手さんは、一旦無口になったので、今度は婆ちゃんのほうが話しかけました。
『運転手さん、忙しいかい』
「いやあ、忙しいのは午前中だけですね」
『あら〜そうなの、やっぱしねえ・・・・・夕方は忙しいんでしょ』
「いやあ、忙しいのは午前中だけさ」
『あら〜そうなの、やっぱしねえ・・・・・』
婆ちゃんは、タクシーの忙しいのは午前中からだと知っていたわけじゃないんだけれど
『やっぱしねえ』と、ちょっと知ったかぶりをするのが他人と放すときのクセなのよ。
タクシーはそろそろ病院に到着です。
『この病院は、いろんな人がいっぱい働いているもねえ』
「そうですねえ、ウチのやつも、ここに入院してるからわかりますよ」
『あら〜そうなの』
気づかって楽しく会話をしてくれた運転手さんの、もう1つの暮らしをかいま見た思いでした。
ありがとうございました。
奥様、どうぞおだいじに。