北海道・札幌発・だべさ通信5

育った家は記憶で蘇る

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「散歩行くかな」旦那さんが言いました。
それじゃあ一緒に行きますか。
散歩と言うよりも運動不足解消ね。
「昔の家のあったあたりにでも行ってみるか」

 

旦那さんの育った家があったのは、手稲駅のすぐ傍だったそうで、時々離れた所から「あそこだよ」って聞かされていただけでした。
今はもう家々が立ち並び、道路も変わり、用事もないので行く事もありません。
「ここに踏切があってな、そのあたりに道路があったんだわ。そこのコンクリート屋の傍には昔、川が流れていたんだぞ」
当時は見渡す限りの畑の中に、ぽつんぽつんとしか家は建っておらず、現在とはまるで世界が違っていました。
仕方ないさ、50年間のタイムマシンに乗ってしまったんだもの。

 

 

小さな公園の角に立ち止まって、線路と、そばの住宅のあたりを眺めました。
「たしか、あのあたりだったような気がするんだけどなあ」
私の目には今の時間の景色しか見えないけれど、旦那さんは確かに、当時の風景を見ていました。

 

 

時間をグルグルと巻き戻すと、いつか見たモノクロ写真が現れました。
あらあら、きかんぼの男の子が生意気そうにしてる。牛舎に走って行って出たり入ったりしているわ。
あいつがきっと旦那さんだね、写真で見た男の子だ。
もんぺを履いて、こまごま働いている色白の女性は、若い頃の婆ちゃんかもしれない。

 

地上がどんなに変わってしまっても、その空間には確かに昔、存在していた暮らしがありました。
ただ、今の時間には見えないだけなのです。
私が子供の頃に育った木造の家の夢を見るように、旦那さんの記憶の奥にも、今でもちゃんと存在しているはずです。
そうそう、その記憶によるとね、そろそろ冬の準備のために、隙間だらけの木枠の窓に、ビニールを張る時期になったんじゃないかな。

 

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