北海道・札幌発・だべさ通信5

婆ちゃんカネもあったしサルもいる

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「カネあったのか?」と、婆ちゃんが聞くので、私は、前日に起きた事をもう一度説明しようと思いました。
どこかにしまったはずのお金がなくなったのではなくて、始めからお金はなかったという事を。

 

でも旦那さんは、私がしゃべり出すまえに、
「あったから大丈夫だ」と言いました。
婆ちゃんは「そうか」とひと言いうと、不思議と安堵の空気が流れました。
そうだった。
いちいち説明する事よりも、こんな空気が大事だったのです。

 

婆ちゃんが体調をくずして入院したのは春の事、今の病院に移った期間も合わせると、かれこれ半年が過ぎようとしています。
その間にも、本能や欲求を包んでいた理性の壁は少しずつ剥がれ落ち、その部分には、得体の知れない創造物が、その穴埋めをするようになりました。
現実と、そうでない物が入り交じった会話がスムーズに終るはずもなく、説明するほうも、されるほうも、気持ちが憂鬱になっていまいます。
だから時と場合によっては、返答は臨機応変でよいのだと思います。

 

婆ちゃん・・・・「母さん母さん、(私の事)」
私・・・『なになに?』
婆ちゃん・・・・(小声で)「ここにはな、葬儀場もあるんだとよ。昨日な、隣りの部屋からふたり、そっち行ったわ」
私・・・『え、2人も!!ありゃー』
婆ちゃんは、ちょっと得意そうです。

 

婆ちゃんの想像物はそればかりではありません。
「あそこに寝ている婆さんの所にはな、毎日、旦那が来ているわ。だけれども、枕んとこに位牌(いはい)も置いてあるべさ。たまげたもんだ」
それを聞いて、私も旦那さんも、そのお婆さんの枕元を、ついついチラッチラッと見たりしちゃった。
ご主人が毎日のようにお見舞いの訪れる事は本当で、枕元の位牌は、もちろん現実ではありません。
それでも、もしやと見ちゃうんだから、おっかしいよね。

 

旦那さんが「そういえばよ、今度は婆さん、” 向かいに寝ている婆さんが、大人しいサルを飼っている” って言ってたぞ」と言いました。
ええ、猿!?
そりゃあ確かめてみなくっちゃ。
婆ちゃんの脳は、私達の考えも及ばぬ世界を旅しているようです。

 

 


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2 Comments

  1. すみれ

    私も母が入院して 長いのですが(9ヶ月)
    いつも思う事は?寄り添ってあげるココロが(思いやりの気持ち)大事な気がします
    むろんこれが ほどよく継続していくこと・・・
    夫婦でお見舞いへ行くのは とってもいいことって思います 私も週末いつも夫婦で行っています
    夫は自然体で ありのままの母の話に耳を傾け 笑ったり目を細めたり・・
    ぽぷらさん夫婦の絶妙な合の手(愛)が おばあちゃんの心をいつも暖かくしているように思います

    Reply
  2. ぽぷら

    すみれさんへ
    すみれさんも、本当にご苦労様です。
    正直、自分が客観的に見ていられるのは、婆ちゃんは今、自分から離れた病院にいるからだと思うのです。
    毎日の介護が自分の肩にかかっていると、客観的に見る心の余裕がありません。
    生身の人間だもの、だれにもあり得ることだと思うのです。
    すみれさんも、決して無理をされませんよう。

    Reply

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