老いること

婆ちゃんが「母さん、爪切ってくれや」とやってきました。
婆ちゃんの爪はとても固くて厚くて丈夫です。
「本当に立派な爪だねえ、やっぱり若い時から牛乳を飲んでいたからかねえ」
「おら、仕事してたからだべよ」
でも、時々爪が割れるのは切り方が悪いからかな。それとも、年齢的、栄養的なものなのでしょうか。

婆ちゃんは、私よりも便秘症で、かかりつけの先生からいつも便秘薬をもらっています。
その事を、みとりの介護士をしている景子に話した事がありました。
すると景子は
「歳をとるってことは、内蔵も歳をとるって事なんだよ。だから腸を動かす事自体、年寄りにとっちゃ大仕事さ」と言いました。

その話を聞いた時、私は今まで考えていた事が、少し間違っていたと気づきました。
野菜を食べようとかヨーグルトを食べようとか、同じ土俵で物事を言っていたけれど、年寄りにはそれ以上にハンディってもんがあったんだね。
婆ちゃんの爪は固くて丈夫だけれど、しなやかさがなくなってしまっているのは、やはり年齢的なものなのかもしれません。

「おら指も曲ってしまったもな」
「ん、仕方ないよ、そういうものなんだから。はい切れましたあ〜」
「はいどもども。イモでも食べるべ」
ちょうど今、茨城から干し芋が届いたところです。
カットしていないバナナみたいな干し芋です。
みんなで頬張って恵方巻きみたいだね。
「あら、お昼だわ。婆ちゃんうどん食べる？」
「いらないいらない、イモ食べたから腹いっぱいだも」
「天ぷらも乗せるよ」
「じゃあ少しだけでいいべよ」